とある絵描きの「線画の描き方」

線画の描き方
アタリ~ラフから線画までの描き方、進め方を一例として掲載してみます。
ちなみに私は差分対応しやすいよう、こまめなレイヤー分けをする大量のレイヤー生産型。

作例では「SAI2」を使っていますが、クリスタでも応用可能です。
※なお、スクリーンショットは完成後のファイルから遡って撮っています。

アタリの作成

今回はヘッダー用の横長イラストです。顔をメイン&流れる髪が目立つようにしたい。
正直、ざっくりすぎるアタリですが、自分が分かればOKです。
色&レイヤー分けしておくと区別しやすいです

ラフの作成

中にはこの状態からいきなり本番の線画へいける人もいますが、私はアタリ→ラフです。
一言にラフと言っても「ポーズラフ」「デザインラフ」「詳細ラフ」など、取引先によっても色々と名称がありますが、私はポーズラフ=アタリ、デザインラフ=ラフ、という感覚です。
まずは線画ラフ
コダテ
ロン毛の成人男性…たまにはファンタジー系でいこう。
祭司長とかしているかもしれない。じゃ、穏やかそうな微笑にするか。
神職の証みたいな感じで額に印を付けてみよう。
顔まわりも寂しいから何か付けたい。フェイスガード的なものにする?
冒険者のパーティで戦うヒーラーやってくれそう。
この辺はアタリ段階で詰めておくべき設定のような気がしますが、今回は描きたい構図が先に浮かんだので、キャラ設定については後出しです。
線画ラフの下に着彩
コダテ
褐色肌はロマン。黒髪も大好きだけど今回は銀髪でいこう。
フェイスガードは、肌の色に映える白にしよう。瞳の色は仮で翡翠。
高貴そうに見えるようホワイト+ゴールドでいってみたい。

いよいよ線画の作成!

ラフを参考に線画を描くため、ラフ着彩はいったん非表示にして、線画ラフも薄い色にします。
私は水色か薄紫を使ってます。今回は水色。そんな気分。
顔の輪郭
私は顔の輪郭から着手するタイプ。ということで、まず輪郭からいきます。
顔パーツ
表情差分の制作が必要な場合は分け方を変えますが、今回はその予定がないので1フォルダにまとめ。それでも3レイヤーに分けているのは位置調整などがしやすいからです。

ぷちテク:重なり部分を白ベタでマスク

修正が全く必要ないなら1レイヤーでガンガン描くんですが、例えば今回のように髪型が割と複雑な場合、重なる部分を修正したい場合に微調整が大変なので、パーツ分けしちゃいます。
今回、髪を「フロント(前髪)」「ベース」「バック(後ろ髪)」とグループ分けしました。
フロント(前髪)
他パーツとの重なりがわかりやすいよう一時的に別の色で清書してみます。
今回は見やすい赤にしました。
さて、前髪が「耳」「まゆげ」「フェイスガード」に被りますね。

3つのレイヤーそれぞれで、前髪が被る部分をマスキングしてもいいんですが、修正のたびに影響が出るレイヤーそれぞれのマスキングをやり直すのも面倒なので、こうしてます。
いったん、見やすいように別の色で塗ります
上記のスクリーンショットでは、前髪の線画「フロント」下に「※白ベタ」と名のレイヤーがあります。
こうすると1枚だけで、その下にあるレイヤー群へのマスキング代用ができます。
線画を黒、ベタを白に
ちなみにフェイスガードも同じように「白ベタ」でマスキング代用しています。
これなら、例えフェイスガードの形状などに変更が発生しても、顔の輪郭はノータッチで済みます。
前髪よりも後ろにある「ベース」も描く
髪のベースを描く時も、その手前にある「フロント」は白ベタでマスキングしているので、前髪と重なる部分も気にせず描いていけます。
耳はね、仕方ないね。耳と重なる部分は単に消せばいいんですが…
こちらは通常のレイヤーマスクで対処
こちらで白ベタを使わない理由は単に「髪」レイヤー群が、耳のある「輪郭」レイヤーよりも上にあるため。白ベタマスキングしようがないので、レイヤーマスクで対応。普通に消しゴムでもOKです。
でも何度か髪を描き直しそうならレイヤーマスクの方が楽かな。
同じように白ベタマスクを利用して装飾品もセット
この白ベタマスクの利点は、レイヤーグループごと位置の微調整がしやすいこと。らくちん。
最も効力を発揮するのは帽子や眼鏡、装飾品がある時ですね。
いったん、見やすいように別の色で塗ります
ポニーテール部分より前面に来る全パーツを白ベタマスク化。
最初から白で塗ってもいいんですが、塗り漏らしなどに気付きやすいように最初は別の色で。
クリーム色を白で上書き
これであとはテール部分を心赴くまま、他パーツを全く気にせず描くことができます。気楽!
毛束の流れがあるので勢いが必要。だと思う
ちなみに白ベタマスクを非表示にすると↓こんな感じです。
頭部のベースにガンガン被る
白ベタマスクしていることで、例えば「頭部ベースの髪の流れを変更」という時も、テール部分は現状維持しておくことができます。いちいち修正部分に合わせて再調整の必要がなくて楽です。

線画レイヤーをフォルダごと複製→統合

フォルダ「★線画」を複製→複製されたフォルダを統合で1枚レイヤー化
白ベタマスクを使う場合のデメリットとしては「線画なのに(白)塗りレイヤーがある」状態になることなので、編集用に元の線画フォルダは維持したまま、複製したものを統合して1枚レイヤーにします。
白の部分を透過!
統合したレイヤーに対して「輝度を不透明度に変換」をかけて白い部分を透過すれば完成!
※クリスタの場合は「輝度を透明度に変換
SAI2の場合
輝度を不透明度に変換
CLIP STUDIO PAINTの場合
輝度を透明度に変換

線画が完成!

見やすいように白背景
ちゃんと透過状態です

まとめ

基本的にはひたすら清書するだけなんですが、他と被るパーツは「白ベタ」で代用マスキングしているというあたりが少しだけ変わったテクかもしれません。

白ベタマスクの利点は「位置の微調整が楽」の一点に尽きます。
あとは「他レイヤーのマスクをし直すために探し回らずに済む」というのも、個人的には大きなメリットに感じています。
コダテ
特に「帽子」「眼鏡」など、他パーツより前面(上層)に来るものは楽!
一発で位置が決められない/位置調整したい人にはお勧め。
最後に統合→透過しなくても、実は「元の線画フォルダを乗算に指定」でもOK。シンプル。
線画フォルダの下に着彩フォルダを作っても、ちゃんと透過されて見えますしね。

ただ、線画の色トレスや範囲選択元に指定する場合「透過されている1枚モノの線画レイヤー」があると便利だったりするので…このあたりは次回の「着彩の塗り方」で解説してみます。
コダテ
ただ正直、着彩については線画よりも語れることが少ない…
ひたすら塗って色トレスして色調整して完成。