雲田はるこ「昭和元禄落語心中」
ツイッターのTLで時折、見かけていたこのタイトル。
近所のGEOへ行ったら目立つ場所に人気作として陳列されていたのでレンタル決定。
あああーもっと早くに読めばよかったぁあああ!!!
本編であろう「与太郎篇」も楽しいのだけど、ぐいぐいと引き込まれるきっかけになったのは2巻前半から始まる、お師匠である有楽亭八雲(八代目)の過去語り「八雲と助六篇」!
どこか影を背負い気難しくて皮肉げな八雲の、その入門時代。
互いの運命に関与しあう同期の弟子「助六」との出会いから始まるこの話。
明るくて剛気、太陽の如く快活で愛嬌も備えた初太郎(後の助六)と、どこか陰鬱で気難しく眉間の皺が消えない菊比古(後の八雲)。親なし故に逞しく育った初太郎は、花柳界の家に生まれながらも男子であるため七代目・八雲の養子に出された菊比古を「坊(ぼん)」と呼び、そんな初太郎に時には助けられ、時には落語家としての助六の類まれなる才能を妬み、憧憬と嫉妬が綯い交ぜになりながらも落語家として少しずつ成長していく菊比古。
八代目の「有楽亭八雲」襲名を巡る、二人と周囲の思惑。
やがて辿り着く悲劇。
5巻の前半まで語られる「八雲と助六篇」からの、「再び与太郎篇」で始まる再生へ歩き出す流れが素晴らしい。
与太郎(と、ここでは敢えて呼ぶ)の明るさが繰り返しを断ち切り、何をどのように変えていけるのか…が今後も楽しみで目が離せない。落語、DVD借りて見ようかな…?(母が好き)
腐女子視点から見れば当然、「なんだこのヒモ亭主としっかり者の女房みたいなのは」となるわけなんですが。敢えてフィルターOFFで純粋に読むのがこれまた楽しい。
それにしても若かりし頃も危うい色気があるけど、再び与太郎篇の年老いた白髪の八雲師匠がこれまた妖艶というか凄みのある退廃的な美というか。翳りを帯びて素晴らしい。
サロメに代表される「ファム・ファタール」は男を破滅させる魔性の女という意味で、みよ吉が八雲と助六にとってのそれ…と見せかけて、実は八雲こそが助六とみよ吉にとっての運命を変える魔性だなっていう。
それと7巻でのヨタちゃんカッコ良すぎて胸が熱い。
小夏に託す与太郎と、与太郎に託す小夏。
大事な人が死の淵を彷徨っても、そこに高座があり、話を待つ客がいる。
全てを堪えて一言「落語やんなきゃ」「待ってるから」と言い放った時の鬼気迫る表情。
必死だった。そして素晴らしい『居残り』だった。素晴らしかったなぁ。
今、アニメやってるんですよね。見られないんですよ函館。くっそう!
おとなしくDVD待ちます。
→DVD/Blu-ray、出ました!
9巻の発売は2月5日!
有楽亭八雲の落語が聴きたい――。
その心ひとつで叶えた贔屓筋だけの小さな会で、与太郎こと三代目助六がかけた思い出の根多が、師匠・八雲の心を動かし、もう一度高座へと導く。
が、無粋な邪魔者が場を乱し……?
時は巡り、頑なだった八雲に再び慰問落語の機会が訪れる。
めちゃくちゃ気になる。ヨタちゃんがんばって。当日、新刊で買わねば。